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善管注意義務とは?~かんたん大家業用語解説

■大家さん用語解説

■善管注意義務(ゼンカンチュウイギム)とは?

善管注意義務とは、民法の中の「債権編」第400条で規定されている「善良な管理者の注意義務」のことを示します。

(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
 
主に、最終的にモノ(中古車・美術品・建物のような個性のある特定物)の引渡し義務(納品・返還)を負う人に対して、引渡すまでの期間、目的物である特定の「モノの保存・保管」に関する義務規定だという事が分かります。
 
 
 
 
 
「契約その他債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」というニュアンスがとても抽象的かつ曖昧ではありますが、取引上(契約上)において一般的かつ客観的に要求され、期待される程度のごく常識的な注意義務であるという事になります。
 
 

■善管注意義務違反とは?

 
この保管期間に義務者が「善管注意義務」に対して過失責任が問われた場合、取引相手(契約相手)に対し、それによって生じた損害に対する賠償責任契約の解除が可能となることが考えられます。
 
 
例えば、大家業でいうと、部屋の返還という引渡し義務のある賃借人さんの部屋の室内で、借りている間(引き渡しまでの期間)に何らかの原因によって室内設備が破損した状況があった場合、部屋を借りて(つまり保管して)いた賃借人さんが「善管注意義務」を果たしていたかどうかが焦点となります。
 
 
仮に賃借人さんが雨漏りが起きていることを知っていたのに、大家さんに知らせたり、修繕を依頼することもなく放置してそのまま暮らしていたことによって、天井が腐って剥がれてきたという状況があった場合、
 
 
 
賃借人さんの「善管注意義務」違反によって、損害が拡大したことが疑われます。
 
 
賃借人さんの「善管注意義務違反」が認められた場合は、債務不履行(約束した義務を果たしていない)ことによる損害賠償請求や、義務を果たさなかった賃借人さんとの契約自体を大家さん側から解除することもできる可能性があるという事です。
 
 
一方で、大きな台風の襲撃によって雨漏りが起こり、同時に天井のに毀損が見られる状況となった場合、賃借人さんが「善管注意義務」を果たしてきていたとしても起こったであろう損害という事になりますから、賃借人さんは責任を免れることが出来るという実益もあります。
 
 
 
この場合、善管注意義務違反として賃借人さんが損害賠償責任を負うという事は考えにくい状況となります。
 

■善管注意義務と似て非なる保管義務

「善管注意義務」と似て非なる保管に関する義務として、「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」「自己のためにすると同一の注意をなす義務」というものがあります。

 

ことばだけではとてつもなく分かりにくいのですが、「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」(民法第659条)、及び「自己のためにすると同一の注意をなす義務」(民法第827条)は「善管注意義務」に比べると軽度な注意義務という事になっています。

 

(無報酬の受寄者の注意義務)
第659条 無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
 
(財産の管理における注意義務)
第827条 親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。

 

判断材料としては、いずれも取引関係ではなく、無報酬で管理している立場にある人に対する軽めの注意義務という事です。

 

この場合に「義務違反」(つまり損害賠償責任が問われる状況)となるのは、重過失(重大な不注意や不手際)がある時のみで、軽過失(うっかりなど、軽度の不注意)の場合には責任は問われないという判断がなされます。

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